spring wind 

 〜春は誰のもとにも訪れる〜


 


 ーー2003年 初春

 まだ冷たい風が吹きすさぶ中
 青く澄みきった空の下には、たくさんの人間が働いている。
 そんな一つの会社をおさめる社長の出来事。

「おねがいします!辞めさせないで下さいっ!」
 会社の一室に甲高い女の声が響き渡った。
 


 ここは世界的に有名な企業を納める”カ゛フ゛リエフ・コーホ゜レーション”の社長室。
 


 一年前に前社長、つまり現社長ーカ゛ウリイ=カ゛フ゛リエフの父が他界したため、今は冷酷非道とウワサされる、まだ18のその息子が社長の座につき、会社を納めている。
 


 「君に話すことは何もないと言ったはずだ。」

 現社長であるカ゛ウリイが元秘書である女性に冷たい言葉を投げかける。

 この元秘書、確かに有能ではあったのだが、何かあるごとに色目を使ってきた為、ついには、うんざりしたカ゛ウリイがクビの宣告を言い渡したのだ。

 どうやって追い出そうかと考えていたその時。

 コンコン
 「失礼します。」

 絶好のタイミングで扉がノックされ、第二秘書であるセ゛ルカ゛テ゛ィスが入ってくる。
 彼は秘書であると同時にカ゛ウリイの信頼できる数少ない友人でもあった。

 「カ゛フ゛リエフ社長は、この後、大切な会議があるんだ。とっとと出て行ってもらおうか。」 

 「くっ・・・。・・失礼致しました・・・。」

 セ゛ルカ゛テ゛ィスの一言に、これ以上何を言っても無駄だと悟ったのか、扉の閉まる音と共に、女は社長室を後にした。


 「はぁ・・・。お前はいったい何人秘書を辞めさせれば気が済むんだ?」

 誰もいなくなったのを確認し、セ゛ルカ゛テ゛ィスはポツリと問い掛けた。
 カ゛ウリイは少し考え事をする素振りを見せ、そのあとに答えた。

 「あぁ・・、すまんな。ところでセ゛ル。さっきの、ありがとな。」

 カ゛ウリイの答えにどこか納得しない点もあったが、 セ゛ルは、あえて言っても無駄だろうと判断し、ため息を一つついた。

 「・・いや、別に。・・・あぁでも言わなきゃあの女は帰らんだろう。」

 実は会議というのは、セ゛ルカ゛テ゛ィスの、心ばかりのウソである。
 本日の仕事がもう終わっているというのは、すでに言い渡してあったので、カ゛ウリイにはわかっていたのだ。

 「セ゛ル、ため息ばっかりしてると、幸せが逃げちゃうぞ♪」
 「お前だけには言われたくないな。♪を付けるな、♪を!」

 どうしても馬鹿にされたようにしか聞こえないカ゛ウリイの言葉を指摘していたその時。

 ヒ゜リリリリ・・・・・ヒ゜リリリリ・・・

 セ゛ルカ゛テ゛ィスとの会話の最中、カ゛ウリイの携帯の音が、広い室内に響き渡った。

 カ゛ウリイは部屋を出ようとしたセ゛ルカ゛テ゛ィスを声で制し。
 電話に出た。

 「もしもし。リナか?」

 カ゛ウリイに呼び止められたセ゛ルカ゛テ゛ィスは、その目の前にいる男の一言と顔を見たとたん、 目を丸くした。

 カ゛ウリイは柔らかく微笑み、その声で話し掛けられたら、街行く女たちの10人中9人は落ちるであろう優しい声で、電話の相手と話している。
 名前からして女のようだ。
>
 セ゛ルは、カ゛ウリイと高校に入った時からの付き合いだが、いまだかつて、女に対してこれほどまでに優しく接するカ゛ウリイを見たことがなかった。


 「あぁ、わかった。今から迎えに行く。」

 ピッ

 「と、言う訳で。後は任せた、セ゛ル。」
 「えっ、ちょっ・・・・・。」

 いきなりのことにあせり、呼び止めようとするが、ときすでに遅し、 言うなり、いつの間に準備を済ませたのか、荷物を持ち、カ゛ウリイは風のごとく部屋をあとにした。

 「・・・・・俺もアメリアに電話するかな・・・。」

  後には独り、部屋に残されたセ゛ルカ゛テ゛ィスのむなしい響きが残るばかり・・・

 

 

 

  とある高校の前に一台の黒塗りのベンツが止まった。
 下校する女生徒たちは、中から出てきた金髪の青年を見、 黄色い声を上げている。

 カ゛ウリイは、校門の前で立っている、栗色の髪の少女を見納めると、 

 「おぉ〜い、リ・・」

 優しく微笑み、声をかけ・・・

 「この馬鹿くらげ!!」

  ・・ようとしたが、目の前の女子高生ーリナの声によって遮断された。

 「あんた人の了解も聞かないで何勝手に決めてんのよっ!おかげでこの場所から動けないじゃない!おまけにあんた目立ちすぎんのよっ!!」

 リナの声も目立つと思うんだが・・・と思わないでもないが、あえて口にするのはやめた。

 「すまん・・・。だってリナ、朝一度会っただけだろ?まさかリナから電話くれるだなんて思ってなかったからさ、うれしくってつい・・・。」 
 「・・なっ・・・。」

 カ゛ウリイのストレートな言葉に、リナの顔がみるみるうちに赤く染まっていく。

「と、とにかく!ご飯、奢ってくれるんでしょ?朝言ってたじゃない。」

 否定しない所を見るとまんざらでもないのだろう。
 それをうれしく思い、カ゛ウリイの顔からは、溢れんばかりの笑顔が絶えない。

 「言ってたか?」

 カ゛ウリイは子犬のように嬉しそうに受け答えしている。しっぽがあるなら、きっと、ぶんぶん振っているであろうその様子に、リナは再、顔を赤くした。

 「言ってたの!ほら、行くわよカ゛ウリイ!」
 「あぁ!」

 言って二人は繁華街へと歩いていった。

 二人が去った後には、優しく春風が吹き、どこかからか風に乗って桜の花びらが、ひらりと舞い落ちた。

 その後、リナが学校で質問攻めに会ったのは、また別の話・・・

 

 

 



   君に出会ってから俺の人生は180°回転したんだ

    君に出会うまでは白黒だった俺の世界

    生きる意味さえ見つけられなかった俺に色をくれたのは君
   

    今は君だけが俺の存在理由   

 

 
 

 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 


  家は名家だった
  その肩書きのおかげで
  なんど命を狙われたか

 今はもう数えるのも馬鹿らしい

 家の中はいつも静まり返っていた
 仕事に行って帰ってこない父
 毎日のように高価な品を買いあさる母
 唯一優しかった兄も
 今は 俺への冷たい視線しか返してこない

 子供の頃はばあちゃんが優しく接してくれたが
 いまはもう思い出しか残っていない


 それから俺は
 優しさ、笑顔、愛情、等のすべてのものを捨ててきた

 生きていくのに必要のないもの達、あるだけ無駄だとあきらめた心


 そんなある日
 仕事に向かう途中、少女とぶつかった
 少女が顔を上げた瞬間

 一瞬で魅せられたその赤いまなざし

 優しい春風が俺を包み込んだ

 彼女といるだけで
 春風は凍った心を溶かしていく

 彼女と話しているだけで自然と笑顔がつくられる
 次々と湧き上がる感情
 もう二度と取り戻すことなど出来ないと諦めていたものが
 まだ心の底に眠っていた

 気付いたときには携帯の番号を書いた紙を少女に持たせていた


 たとえ何年かかっても 俺は君を手に入れる




 

♪蝶華さんから頂きました(^^)

ガウリイの豹変ぶりがまあなんとも素直で(笑)振り回されるゼルの苦労が忍ばれます(^^;)

社会人(しかも名門の社長)と女子高生っていうシチュエーションも萌ですねvv

ガウリイの心情が切なくて・・・ガウリイにとってはリナの存在そのものが春なんですね。その後も色々ありそうですが、絶対に幸せになってもらいたい2人ですvv

素敵なお話をありがとうございました(^^)