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気がつくと、周りは真っ暗だった。
「あ、そっか……」
野宿の最中、突然襲ってきた魔族。撃退はしたものの、戦っている間に足場の悪いところに出てしまっていたらしい。
あっと思った時にはもうあたしの身体は宙に投げ出されていて。
「取り敢えず、あいつを倒し終わった後で良かったわね……」
これでまだ生きていたとしたら洒落にならない。
どれくらい落っこちたのかは分からない。おまけに今夜は新月。森の中ということもあって、あたしの目には何も映らなかった。
ゆっくりと身体を起こしてみる。あちこち痛むが、どうやら骨折とかひどい怪我はしていないみたいだ。
「ライティング」
魔法の光を生み出し、息をつく。痛む身体を引きずりながら、あたしは近くの木の根本に座り込んだ。
「ガウリイ、どうしてるかな」
耳に残っている、ガウリイの声。
やっぱ、心配してるんでしょうね。あの過保護の自称保護者は。
あたしがほんの少し傷…それもかすり傷を負っただけでおろおろして。そのくせ、自分の怪我には信じられないくらい無頓着で。あんなんでよく流れの傭兵なんてやってられたと思う。
そう。
いつだって、ガウリイが優先するのはあたし。
でも……それが最近、心苦しい。
「もっと自分の事考えても良さそうなのに……」
いつもいつも、厄介ごとに巻き込まれるのはあたし。そりゃ、トラブルに自分から首を突っ込むくせがあるのも事実。
でも、最近はトラブルなんてそんな可愛らしい名称ではすまない。
“金色の王”の力を借りた呪文が使えるあたしは、魔族にとって無視できない存在になってしまっていた。そのおかげで、今夜のように魔族に襲われることも珍しくない。
あたしがそれを望んだわけではない。
でも、それが事実。あたしには変えることの出来ない……
とはいえ、あたし自身がそれを嫌だとか思っているのではない。どういう状況であったとしても、あたしはその全てを自分の意志で決めてきた。例え、選択肢がたった一つしかないと思えた時でも。そうすると決めたのは、いつだってあたし自身。
だから、その結果がどんなものになったとしても、それを受け止めていく覚悟くらいある。
……それでも、ガウリイは違う。
あいつは、ただ巻き込まれただけ。たまたま森の中で出会ったあたしにくっついて来てしまったから。人のいいあいつは、魔族に狙われるあたしをほっておけないと思ってるだけ。
心配性で過保護で……底抜けに優しい、ガウリイは。今更あたしを見捨てられなくなってるんだ。
誰だって、自分の命が一番大事なのに……
「ほんと、馬鹿よね……」
さっさとあたしなんて見捨ててしまえばいいのに。そうすれば、もっと楽に生きていけるのに。
ガウリイほどの腕があれば、どこだって雇ってくれる。魔族相手に十分通用する腕を持っているガウリイが、人間相手で後れをとるはずがないんだから。
そのうえ、持って生まれたあの顔。
そうしようと思えばいくらでも楽に生きられる。なのに、ガウリイはいつもあたしと一緒にいる。辛い道を、選び続けている。
「でも……一番馬鹿なのは、あたしよね……」
彼の優しさに甘えて、別れられないでいるのはあたし。
離れられないのは……あたしの方。
あの一件で嫌というほど思い知らされた自分の気持ち。それを自覚した後、あたしは月に誓いを立てた。
ガウリイは、あたしが守る。
でも。結局いつも守られているのはあたしの方だ。
精神的にも肉体的にも、いつだってガウリイはあたしの盾になってくれている。
盾になって、いつだってあたしの為に傷ついて。
そして、いつか………?
表現の使用のない恐怖に襲われ、あたしは自分の身体を抱きしめた。
でもそれはあり得ない話どころか、つい今さっき起きていてもおかしくない事。たまたまそれがさっきでなかっただけで……
となると、結論は決まっている。離れればいいのだ。ガウリイから。
そう何回も考えた。その度に、彼から離れられずにいる自分がいる。
いつか、必ず。
あたしは、きっと彼を死に導いてしまうのに………
「………………………」
「あ」
声がした。ガウリイだ。
返事をしようとして、あたしは押し黙ってしまった。返事の代わりに、浮かばせていたライティングの明かりを移動させる。
ふわふわと漂いながら、それは遠くへ離れていく。
あたしの周りに、闇がたれ込める。全てを覆い隠す闇が。
あたしは息を潜め、気配を絶つ。
足音が、遠のいていく。
あたしはそれを……ただ聞いていた。
闇の中で。
………これで、いいんだ………
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